働き方改革の中で注目を浴びるフレックスタイム制導入のポイント

政府の働き方改革も本格化し、多くの企業がより効率的な働き方を通じた労働時間の削減を進めようとしています。また近年は育児や介護などとの両立をしながら勤務する従業員も増加しており、より柔軟な労働時間制度の導入が求められています。そのような環境であることから、最近、フレックスタイム制への関心が高まっています。そこで今回は、フレックスタイム制導入時のポイントや活用イメージについてとり上げたいと思います。

1.フレックスタイム制とは
通常の労働時間制度では、例えば始業が午前9時、終業が午後6時(途中休憩を1時間)の1日8時間労働といった形で、労働時間が固定的に定められます。しかし、仕事の内容や従業員の状況によっては、忙しい日は長い時間勤務し、一方、比較的余裕がある日には早めに帰るといったように柔軟に労働時間を設定した方が効率的となる場合があります。そのようなときに採用されるのがフレックスタイム制です。
フレックスタイム制においては、従業員はあらかじめ定められた1ヶ月の総労働時間の中で、自らの仕事等の状況にあわせ、毎日の始業および終業時刻を定めることになります。具体的に言えば、今日は忙しいので午前9時から午後8時まで10時間勤務する一方、明日は午前中、特に急ぎの仕事はないので午後1時に出社し、午後6時まで5時間勤務するといった柔軟な働き方が可能となります。その結果、効果的に労働時間を設定することができ、効率的な仕事の実現が期待されます。また育児や介護で、今日は1時間出社を遅らせたいというような場合にも活用することができます。

2.フレックスタイム制採用の手続き
フレックスタイム制を採用するためには、就業規則と労使協定の整備が必要となります。

(1)就業規則
まず就業規則等において、フレックスタイム制を導入する旨を定めることが必要です。
(2)労使協定
その上で労使協定を締結し、a.対象となる労働者の範囲、b.清算期間(1ヶ月以内の期間)、c.清算期間における起算日、d.清算期間における総労働時間、e.標準となる1日の労働時間、f.コアタイム、g.フレキシブルタイムを定める必要があります。

例えば、清算期間が1ヶ月(31日)の場合、その期間の法定労働時間の総枠は177.1時間(31÷7×40)となりますので、その清算期間における総労働時間はこの時間内で定める(例えば標準となる1日の労働時間:8時間×22日=176時間など)ことになります。
なお、フレックスタイム制では、従業員自らが始業時刻および終業時刻を決定することが大前提になっていますので、会社がそれを指定することができません。よって最低限、全員が勤務しなければならない時間(コアタイム)を定めることが多く見られます。具体的には、午前10時30分から午後2時まではコアタイムとするといったように、定めることになります。また過重労働や、夕方から出勤し、夜中に働くといった極端な勤務を防止するため、出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)を定めることもあります。基本的には深夜時間帯(午後10時から午前5時)には勤務を禁止するといった対応が望ましいでしょう。
締結したフレックスタイム制の労使協定ですが、労働基準監督署に届け出る必要はありませんが、調査の際などには提出が求められます。社内でしっかりと管理しておきましょう。

3.制度活用イメージと今後議論される法改正
育児や介護、そして病気の治療など、様々な制約を抱えながら働く従業員が増加しています。またバブルに匹敵する超人材難の時代には、多様な人材を受け入れることが人材確保の大きなポイントとなるため、柔軟な働き方が認められない企業は、人材確保という点で不利な状況に追い込まれることも出てくるでしょう。更には働き方改革による生産性の向上という課題もあります。
こうした環境を背景として、今後、フレックスタイム制を導入する企業の増加が予想されます。また、厚生労働省としても制度の導入を促進するため、今後、清算期間を3ヶ月に延長するという労働基準法改正の議論を進めていく予定です。

フレックスタイム制など、柔軟な労働時間制度の導入に関するご相談などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

■参考リンク
厚生労働省「効率的な働き方に向けて フレックスタイム制の導入」http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/flextime/index.htm

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

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