平成29年1月から通勤災害の範囲が見直されました

平成29年1月1日に改正育児・介護休業法が施行されましたが、これに併せて通勤災害の範囲の一部が見直されました。通勤災害は、通勤災害として認められる範囲が複雑であることから、これを再確認した上で、今回の見直しの内容を解説しましょう。

1.通勤災害の対象となる通勤の範囲
そもそも労災保険には、業務を原因として負傷したり、疾病にかかった場合等の業務災害に対する給付と、通勤途中に負傷したり、疾病にかかった場合等の通勤災害に対する給付の2種類があります。
このうち、通勤災害の対象となる通勤とは、就業に関する移動であり、以下の(1)から(3)について合理的な経路および方法により行われる移動のことをいいます(業務の性質を有するものを除く)。

(1)住居と就業の場所との間の往復
(2)就業の場所から他の就業の場所への移動
(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、または後続する住居間の移動(単身赴任などの場合)

なお、移動の経路を逸脱し、または移動を中断した場合には、逸脱・中断の間およびその後の移動は通勤として扱われません。

2.逸脱・中断の例外と今回行われた見直しの内容
逸脱・中断の考え方は1.のとおりですが、帰宅途中にスーパーマーケットに立ち寄り日用品を買うなど、移動の経路を逸脱したり、移動を中断することがあります。このような逸脱・中断が日常生活上必要な行為で、やむを得ない事由により行われる最小限度のものは逸脱・中断の間を除き通勤として扱われることになっています。この内容をまとめると下図のとおりとなります。


この日常生活上必要な行為とは、具体的に次の5つに限定されています。

(1)日用品の購入や、これに準ずる行為
(2)職業訓練や学校教育、その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
(3)選挙権の行使や、これに準ずる行為
(4)病院や診療所において、診察または治療を受ける行為や、これに準ずる行為
(5)要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母および兄弟姉妹の介護(継続的に、または反復して行われるものに限る)

このうち(5)については、今年1月より施行された改正育児・介護休業法に伴って見直しが行われ、孫、祖父母および兄弟姉妹の同居要件・扶養要件が削除されました(下線部分が削除)。

従業員から相談があった際、スムーズに対応し、適正な給付の手続きができるように、この機会に通勤災害の範囲について確認をしておきましょう。

■参考リンク
厚生労働省 「労災補償関係リーフレット等一覧」http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyousei/rousai/index.html

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。

PAGE TOP